内縁の妻は遺産相続できない!内縁の妻が検討しておくべき3つの対策

内縁の妻 アイキャッチ

夫婦が「内縁関係」の場合、一方当事者が死亡した後の相続問題について特に慎重に考えておく必要があります。

内縁とは、婚姻届を提出せずに事実上の夫婦関係となっている状態です。一緒に暮らして周囲からも「夫婦」と思われていますし、子どもがいるケースもあります。ただし婚姻届を出していないので名字が異なります。

内縁の妻は「愛人」とは異なります。愛人は、通常既婚者が配偶者とは別に住む場所などを提供して男女関係を続けている場合の相手です。愛人との間に夫婦の実態はありません。

内縁関係の相続で何が問題になるかというと、内縁の妻に「相続権」が認められないことです。長年同居し、夫婦同然に暮らしていたとしても、内縁関係や事実婚では遺産相続できません。

そこで内縁の夫婦の場合、死後に配偶者へ財産を残すため生前から対策をとっておく必要があります。

以下では内縁の妻や子どもの相続問題と内縁の妻へ財産を残す方法をご紹介します。


1章 内縁の妻は遺産を相続できない

1-1 内縁の妻に相続権はない

内縁の夫婦は単に婚姻届を出していないだけで、実質的に法律婚の夫婦と何ら変わりありません。しかし法律上「遺産相続権」は認められません。夫が死亡したとき、夫名義の家や預貯金、車や株式などを相続できないのです。生前に対処しておかないと内縁の妻が路頭に迷ってしまう可能性も高くなります。

ですので、内縁の妻(夫)へ遺産を相続させるには、必ずこの記事で紹介させるような対策方法をとっておく必要があります。

例外について

ただし、以下のような場合には例外的に内縁の妻にも一定の権利が認められます。

賃借権について

夫婦が共に賃貸住宅に居住していた場合、夫の死亡後、内縁の妻は大家に賃借権を主張できます。夫に子どもなどの相続人がいなかったら賃借権を承継できますし(借地借家法36条1項)、相続人がいる場合にはその賃借権を「援用」できます(最高裁昭和42年2月21日)。援用とは、代わりに主張することです。

年金について

内縁の妻にも遺族年金が認められるケースがあります。ただしそのためには年金事務所に対して「内縁関係」と「夫婦が生計を共にしていた事実」を証明する必要があります。住民票や家計の状況を示す通帳、家計簿などの資料を年金事務所に提示して遺族年金の申請を行いましょう。

1-2 「特別縁故者」になれば内縁の妻も相続できる

内縁の妻であっても「特別縁故者」として認められれば内縁の夫の遺産を相続できます。

特別縁故者とは、被相続人(死亡した人)と特別な関係にあった人です。たとえば内縁の妻のように生計をともにして支え合っていた人は、特別縁故者として認められやすくなっています。

ただし特別縁故者への財産分与が認められるのは、他に相続人がいないケースに限られます。内縁の夫に他に子どもなどの相続人がいたら、内縁の妻が遺産を受けとることは不可能です。

また、特別縁故者として認められても、裁判所が決定した財産額のみ受け取れるだけで、必ずしも全額もしくは大半の遺産を受け取れるとは限りません。

なお、特別縁故者として遺産を受けとるには、以下のステップを踏む必要があります。

①   相続財産管理人選任を申し立てる

特別縁故者として財産を受けとるため、まずは家庭裁判所に「相続財産管理人」の選任を申し立てる必要があります。被相続人の最終住所地を管轄する家庭裁判所で申立の手続きを行いましょう。

②   相続人不存在が確定したとき、特別縁故者への財産分与の申立てを行う

相続財産管理人が選任されたら、相続財産管理人が相続人調査や債権者への公告などのいろいろな手続きを進めていきます。相続人の捜索が終了して相続人がいないことが確定したタイミングで、特別縁故者への財産分与申立期間がもうけられます。

特別縁故者として財産を受けとりたい場合には、その期間内に家庭裁判所へ特別縁故者への財産分与申立をしなければなりません。

③   特別縁故者への財産分与が決定される

特別縁故者への財産分与申立をしてきちんと主張・立証ができたら、特別縁故者への財産分与が決定されます。すると、特別縁故者として決定した遺産を受けとることができます。

1-3 遺言書があれば内縁の妻も相続できる

遺言書を作成すると、内縁の妻に財産を残せる

内縁の妻が特別縁故者として認められるための手続きには大変な手間がかかりますし、相続財産管理人の選任費用負担も発生します。また他に相続人がいたら特別縁故者としての財産分与を受けることはできません。

このような問題を避けてスムーズに内縁の妻に遺産を移転するには、生前に「遺言書」を作成しておくことをお勧めします。遺言書があれば、被相続人が自由に遺産を内縁の妻へ分与できるからです。

すべての遺産を内縁の妻に分与することも可能ですし、自宅などの不動産と預貯金などの個別の資産を指定して遺贈することもできます。

遺言書によって夫の死後の生活に必要な財産を妻に遺贈することを指定しておけば、内縁の妻が生活に困る心配は不要です。内縁関係の場合、必ず遺言書を作成しておきましょう。

子どもがいる場合には遺留分に注意

遺言書を作成するときには「遺留分」に注意が必要です。遺留分とは、子どもなどの相続人に認められる最低限の遺産取得分です。夫に前妻の子どもがいる場合には、前妻の子どもに「遺留分」が認められます。遺言によって前妻の子どもの遺留分を侵害してしまったら、前妻の子どもから内縁の妻へ「遺留分侵害額請求」という金銭請求が行われる可能性が高くなります。

もしも夫に前妻の子どもがいたら、その遺留分を侵害しないように前妻の子どもにも一定の預貯金などの遺産を相続させる内容にしておきましょう。

なお兄弟姉妹には遺留分が認められないので、夫に兄弟姉妹しかいない場合には遺留分への配慮は不要です。内縁の妻に全部遺贈しても問題ありません。

公正証書遺言がお勧め

遺言書を作成するときには「公正証書遺言」を利用することをお勧めします。公正証書遺言は公証人が作成する遺言書です。公証人が内容をチェックするので間違いが起こりませんし、本人確認が行われるので偽造の心配もありません。公証役場で保管されるので、紛失や書き加えなどのおそれもないのです。

遺言者が自分で作成する「自筆証書遺言」では不確実で紛失や無効になる可能性もあるので、相続対策としては公正証書遺言を作成しておくのがベストです。

公正証書遺言の必要書類と遺言作成の流れ【簡単チェックリスト付】

 


2章 内縁関係の子供も「認知」されていれば相続できる

内縁の夫婦に子どもがいるとき、子どもに父の相続権が認められない可能性があるので注意が必要です。内縁関係のように「法律婚」をしていない男女から生まれた子どもを「非嫡出子」と言いますが、非嫡出子の場合、夫が認知しない限り子どもと夫は「法律上他人」です他人なので、遺産相続権が認められないのです。

2-1 非嫡出子の2つのパターン

法律婚状態にない男女から生まれた「非嫡出子」には、つのパターンがあります。

1つは「認知されている場合」、もうつは「認知されていない場合」です。認知とは、父親が非嫡出子を「自分の子ども」と認めることです。

非嫡出子でも「認知」されていたら父子関係が法律上明らかになるので、実子と同様に父親の遺産を相続できます。夫が内縁の妻との間の子どもに財産を残したいなら、認知する必要があります。

2-2 親が非嫡出子を認知する方法

父親が子どもを認知する方法には、以下の種類があります。

役場への届出

父親自ら「認知届」を作成して役所に提出すれば、認知できます。認知届の書式は役所にあるので、もらって記載すると良いでしょう。

遺言による認知

生前に認知しなくても、遺言書に「認知する」と書いておけば死後に認知できます。ただし遺言によって認知するには必ず「遺言執行者」の選任が必要です。内縁の妻などを遺言執行者にしておくと良いでしょう。

調停、裁判

父親が自ら認知しない場合、子どもの側から認知請求できます。家庭裁判所で認知調停や認知訴訟を起こし、DNA鑑定などで親子関係を立証できれば強制的に認知が行われます。

遺言による認知や裁判所を介した認知は手間がかかるので、できる限り、生前に認知しておくことをお勧めします。

2-3 嫡出子と非嫡出子の相続分に差はない

内縁の妻との子どものような非嫡出子であっても、嫡出子との間に相続分の差はもうけられていません。たとえば前妻の子どもが2人いて内縁の妻との間の子どもが1人いる場合、すべての子どもの法定相続割合は分の1ずつとなります。


3章  内縁の妻が行うべき3つの対策

将来夫が死亡したときに備え、内縁の妻として検討しておくべき対策として、以下のつがお勧めです。

3-1 遺言書を作成してもらうのがベスト

まずは夫に「遺言書」を作成してもらうのが最優先です。まだ遺言書が作成されていないなら、すぐにでも書いてもらうことをお勧めします。

遺言書の内容として、前妻の子どもがいなければ内縁の妻が全額もらうか、内縁の妻と子どもが合計で全額もらえるようにしましょう。

前妻の子どもがいる場合、前妻の子どもに遺留分だけを渡してその他は内縁の妻や子ども受け取れるようにしましょう。

また遺言書は、自筆証書遺言ではなく「公正証書遺言」にしておくことを推奨します。

公正証書遺言の作成にかかる費用を徹底解説【計算チェックリスト付】

3-2 生前贈与を受けておくことも可能

内縁の妻や子どもに財産を残したいとき「生前贈与」も有効です。生前に妻や子どもに財産を移転していたら、相続に関係なくその財産を継続して利用できるからです。

ただし法律婚の配偶者でない場合や認知していない子どもの場合、贈与税控除の制度を利用しにくく生前贈与によって多額の贈与税がかかる可能性があります。

毎年110万円ずつの贈与税の基礎控除の範囲内で贈与を続けるなどの工夫が必要となるでしょう。

生前贈与に必要な手続き〜知っておくべき注意点と節税のポイント〜

3-3 高齢者マリッジ信託という新たな手法

最近、「高齢者マリッジ信託」という家族信託を利用した相続対策方法も注目されています。

たとえば信頼できる家族や親族(自分の子供など)に自宅不動産や他の財産を信託し、内縁の妻を受益者として内縁の妻の存命中には実子に管理をしてもらいます。そして内縁の妻の死亡後の財産帰属先を実子にしておけば、最終的に実子である自分の子どもに財産を引き継がせられます。

遺言で財産を内縁の妻に残した場合、内縁の妻が亡くなればその遺産は内縁の妻側の家族(相続人)に移ってしまいますが、家族信託ではこちら側の家族(相続人)に遺産の権利を戻すことができるのです。

ですので、この方法なら、遺産をまずは内縁の妻、次に子どもという順序で引き継がせることができて便利です。

家族信託の利用方法を工夫するとさまざまな希望を実現できるので、関心がありましたら当メディアを運営するグリーン司法書士法人までぜひご相談下さい。


まとめ

内縁の夫婦の場合、法律婚のケース以上に相続時の問題が複雑で困難になりやすいので、生前から「遺言」「生前贈与」「家族信託」などの対策をしておく必要性が高いといえます。

自分達家族だけで対応すると不備が発生する可能性もあるので、まずは相続関係に詳しい司法書士へ相談するのがベストです。お気軽に、お問い合わせください。

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