
「相続放棄をしたいけど、どんな書類が必要なんだろう…」
望まぬ相続を避けるための方策の1つ、相続放棄。
正確に、かつ出来るだけスピーディーに手続きを完了させたいですよね。
ところがこの相続放棄の手続き、印鑑だけ持って役所へ行けばできる訳ではありません。
相続放棄を行うためには家庭裁判所への申立てが必要であり、申立てに際しては、それぞれのケースに応じた必要書類を自分で集めて提出する必要があるのです!
しかも相続放棄の手続きには期限があり、原則として相続が開始してから3ヶ月以内に申立てなければなりません。
なので、必要書類は可能な限りスピーディーに集める必要があると言えます。
そこでこの記事では、相続放棄の必要書類を徹底解説!
相続放棄手続きのプロである司法書士が、相続放棄の必要書類を詳しくお教えします。
「相続放棄をしたいけど、何を集めればいいんだろう…」と悩んでおられる方の一助になれば幸いです。
目次
1章 必要書類チェックリスト
それではさっそく必要書類をチェックしていきましょう!
リスト化しましたので、ご活用下さい。
必要な戸籍謄本はケースによって変化しますが、この点は3章で詳しく解説します。
相続放棄の手続きでは基本的に2人の人物が登場します。
被相続人(ひそうぞくにん)と申述人(しんじゅつにん)です。
被相続人とは亡くなった方を指します。
対して申述人は相続放棄の申立てを行う人…つまりあなた自身を指します。
2章 絶対に必要な書類の解説
それでは続いて、各書類の詳しい説明に入ります。
この章ではどのケースでも絶対に必要な書類について触れますので、きっちり押さえていきましょう。
2-1 申述書
まずは相続放棄の申述書をチェックしましょう。最終的にはこの書類を家庭裁判所に提出することが目標になります。
相続放棄の手続きは、家庭裁判所へ申述書を提出することで手続きが開始します。
家庭裁判所HPから申述書をダウンロードし、特設記事を参照しながら完成させましょう!
2-2 被相続人の住民票除票or戸籍附票
相続放棄は、被相続人の死亡時の住所地を管轄する家庭裁判所に申立てなければなりません。
よって申立てに際しては、「今回の手続きはお宅の管轄ですよ」という事を立証するため、被相続人の住所証明情報として、被相続人の住民票の除票or戸籍の附票を提出する必要があります。
詳細は後述しますが、戸籍の附票を集めることをオススメします。
ある人が死亡すると今までの住民票から名前が削除されて、住民票の除票が発行されます。
呼び方が変わるだけで、内容は普通の住民票と同じなのでご安心ください。
※戸籍との関連性を示すため、本籍地入りの住民票を用意しましょう
住民票を移動させると本籍所在地の役所に連絡が行き、移動の履歴が一覧状態で保管されることになるのですが、この履歴一覧が「戸籍の附票」です。
住民票よりもこちらの戸籍附票がオススメな理由は、発行機関が本籍所在地の市区町村役場だからです。
戸籍謄本を集める“ついでに”取得することができるので、手間を1つ省くことができます。
2-3 戸籍その①~申述人(あなた)の戸籍謄本~
ここでは戸籍謄本その①として、申述人、つまりあなた自身の戸籍謄本についてご説明します。
どのようなケースで相続放棄を行うにせよ、あなたの戸籍謄本は必ず必要になります
自身の戸籍謄本を見て頂くと、本籍地や両親の名前、以前入っていた戸籍(従前戸籍)の情報が記載されています。
相続放棄に当たっては被相続人と申述人の関係を示す必要があるため、申述人であるあなた自身の戸籍謄本が常に必要になります。
2-4 収入印紙
相続放棄の申立てには、一人当たり800円の手数料の目安が必要であり、収入印紙を申述書に添付する形で納付します。
収入印紙はお近くの郵便局はもちろん、コンビニでも購入できます。
2-5 切手
申立て後、家庭裁判所のほうから申述人宛てに郵送物が送られてきます。
この郵便代は申述人が負担するものなので、申立ての際に切手を同封しておきます。
必要金額は各家庭裁判所ごとに異なるので、管轄家庭裁判所を検索する際にチェックしておきましょう。
なお大阪では、10円×5枚、82円×5枚で460円分同封しておけば、問題ありません。
3章 ケース別!必要戸籍リスト
それではケース別に、必要戸籍の種類をご説明します。こちらもチェックリスト化しましたのでご活用ください。
ただし、3-6以降は戸籍の量が多くなるので、3ヶ月以内の申立期限と併せて考えると、専門家への依頼を検討しても良いケースだと思います。
※戸籍を取得する際は「謄本」を取得しましょう!
3-1 まずは戸籍の種類を確認
ひと言で「戸籍」と言っても、戸籍には3つの種類があります。
ケースによっては色々な種類の戸籍を集めることになりますので、あらかじめ確認しておきましょう。
「被相続人に子供がいるか、いないか」が問題になる場合、被相続人が生まれて初めて入った戸籍(出生時の戸籍)から死亡した当時に入っていた戸籍の全てを集め、被相続人の子供の子供の有無を丹念に調査する必要があります。
この際に要求される、被相続人にまつわる全ての戸籍を「出生から死亡までの戸籍」と呼びます。
自分の戸籍と被相続人の戸籍くらいはすぐに取れますが、出生死亡の戸籍を集めるとなればボリュームは相当なものです。
戸籍は法律の改正により、何度も違う戸籍に作り変えられているため、出生死亡の戸籍を集めると、ほとんどのケースで複数通に渡ります。
更に法律の改正とは別に、結婚・転籍によっても違う戸籍が作られるため、異なる市区町村役場で別々に戸籍を集める必要も出てくるでしょう。
出生死亡の戸籍については、専門家に収集を依頼した方が断然早く確実に集め終わりますが、ご自身で集めてみたい方は次の特設記事も参考にしながら集めていきましょう。
3-2 あなたの夫・妻の相続を放棄するケース
まずは被相続人の配偶者が相続放棄をする場合の戸籍謄本をご紹介します。
配偶者の場合、被相続人と同一の戸籍謄本に入っていますので、被相続人の死亡記載のある戸籍謄本 兼 あなたの戸籍謄本として、1種類で事足ります。
3-3 あなたの親の相続を放棄するケース
続いて被相続人の子供が相続放棄をする場合の戸籍謄本をご紹介します。
子供の場合、最初は被相続人と同一の戸籍に入っていますが、結婚により別々の戸籍に分かれることになります。従って、被相続人の死亡記載のある戸籍謄本 兼 あなたの戸籍謄本として1種類で事足りるケースもあれば、被相続人とあなたの戸籍謄本2種類が必要なケースもあります。
まずはあなたの戸籍謄本を取得して、どのような状態になっているか確認しましょう。
3-4 あなたの祖父母の相続を放棄するケース
被相続人よりも前に子(あなたから見て親)が死亡している場合、代襲相続人として孫が祖父母の相続人になります。
この場合、3-2の戸籍謄本に加えて、被相続人の子が死亡した事実を立証するため、被相続人の子の死亡記載ある戸籍謄本を追加します。
3-5 あなたの子供の相続を放棄するケース
被相続人に子供がいないor子供が既に死亡している場合、被相続人の親が相続人となります。
この場合、被相続人が死亡した事実のみならず、子供がいない事実を立証するため、【出生から死亡まで】の全戸籍謄本を提出します。
3-6 あなたの兄弟姉妹の相続を放棄するケース
被相続人に子供がおらず、かつ、親も既に死亡している場合、被相続人の兄弟が相続人になります。
この場合、被相続人が死亡した事実のみならず、子供がいない事実を立証するため、【出生から死亡まで】の全戸籍謄本を提出します。
更に、「親が既に死亡している」事実を証明するため、親の死亡記載ある戸籍謄本も必要になります。
なお、「子がおらず、親も既に亡くなっている」という状況下では、次に相続人となるのは被相続人の祖父母です。それ故、兄弟姉妹が相続人となるためには祖父母の死亡が必要であり、そのような意味で本来は祖父母死亡の事実も戸籍謄本によって証明する必要があります。
しかし被相続人の年齢からして「この人の祖父母ならとっくに亡くなってる年齢だよね」という事案であれば、祖父母死亡記載のある戸籍謄本の提出は不要の取り扱いとなっている裁判所もあります。
よってまずは被相続人の親の死亡記載ある戸籍謄本だけを提出し、家庭裁判所から特に求められた際に初めて被相続人の祖父母の戸籍謄本を集めれば足りると言えます。
3-7 あなたの叔父・叔母の相続を放棄する場合
被相続人に子供がおらず、かつ、親も既に死亡している場合、被相続人の兄弟が相続人になりますが、被相続人よりも先に兄弟が死亡している場合、その兄弟の子供(つまり甥・姪)が相続人になります。
この場合、被相続人が死亡した事実のみならず、子供がいない事実を立証するため、【出生から死亡まで】の全戸籍謄本を提出します。
更に、「親が既に死亡している」事実を証明するため、親の死亡記載ある戸籍謄本も必要になります。
併せて、「兄弟が既に死亡している」事実を証明するため、兄弟の死亡記載ある戸籍謄本も必要になります。
4章 上申書というイレギュラーな書類
通常では認められない状況で相続放棄を行う場合に、「なぜ今から相続放棄をするのか」を裁判官に説明し納得させるための書類が通称「上申書」です。
法律上要求される書類ではありませんが、実務上重要な書類なので本章で詳しくご説明します。
※上記はあくまでもサンプルです。事案ごとに内容は全く異なります
4-1 相続放棄ができない場合がある
相続放棄の申述は、いつでも好きな時にできるわけではありません。
相続放棄の申術には3ヶ月以内という期限が存在しており、その期間内に手続きをしなければなりません。
また、遺産分割協議や相続財産の消費など、単純承認と呼ばれる行為をした場合、相続放棄が認められなくなります。
具体的には下記のような事情があると、相続放棄の申述が認められなくなる可能性があります。
「被相続人が死亡してから3か月以上経っている…」
「被相続人の銀行預金に手を付けてしまった…」
「被相続人に借金があるとは知らずに遺産分割協議をしてしまった…」
4-2 上申書で特別な事情を裁判官に説明する
上で述べた様な事情があってもなお相続放棄をしたいと言うことは、何かしら特別な事情があるのでしょう。
しかし、今までご紹介してきた必要書類をただ単に出すだけでは、その特別な事情を裁判官に説明し切ることができず、相続放棄の申立が認められない可能性が高まります。
そこで、本来なら相続放棄の申述ができない場合にも関わらず申立を行うにあたり、相続放棄に至った事情・背景・理由を説明した上申書を提出し、「なぜ今から相続放棄をするのか」を裁判官に説明することになります。
従って
・被相続人が死亡してから3ヶ月経過後の申立
・相続財産を使用・消費・処分した後の申立
このような場合は、必要書類と供に上申書を提出しましょう。
ただし、この上申書を提出したからと言って、必ずしもこちらの言い分が認められるとは限りません。
裁判官を納得させるだけの理由を文章化する必要がありますので、内容によっては相続放棄が認められないケースもあります。
よって、上申書を添付するイレギュラーな相続放棄の手続きに当たっては、必ず専門家に依頼しましょう。
5章 相続放棄の手続きを専門家に依頼するメリット
相続放棄は自分自身でも最後までやり遂げることが可能な手続きです。
一方、この手続きを専門家に依頼することで、単に事務手続きや書類集めの代行に止まらず、下記のような様々なアドバイスを含めたサポートを受けることができるというメリットがあります。
・集める戸籍謄本の量が多くとも、スムーズに手続きが進んでゆく
・上申書を出す必要があるイレギュラーな事案でも対応してくれる。
・そもそも相続すべきか放棄すべきかのアドバイスをもらえる
・相続放棄を控えた状況でしても良いことダメなことを教えてくれる
・債権者から連絡に対する適切な対処法をアドバイスしてもらえる
もちろん報酬は必要になってきますが、相続放棄の手続きは法律手続きの中では安価な部類に入ります。
弁護士事務所では10万円ほど、司法書士事務所では5万円ほどが相場のようなので、出費と比較しても多くのメリットを享受できると言えるでしょう。
筆者が所属しているグリーン司法書士法人では、相続関係が複雑なケースや上申書を提出するような難易度の高い相続放棄も数多く取り扱っています。
相続放棄の手続きを検討されている方は、ぜひ弊所が実施している無料相談を是非ご利用ください。
6章 終わりに
いかがでしたでしょうか?
この記事では相続放棄の手続きに必要な書類を解説してきました。
お読み頂いた皆様が必要書類をスムーズに集め終わり、相続放棄の手続きを無事に終えることができたなら幸いです。
ここまでお読み頂きありがとうございました。