65歳以上の親を持つ人【必見】親の認知症による相続リスクと知っておきたい対策4つ

はじめに

「親が認知症になってしまった。相続対策はできるのだろうか・・・」

「認知症とまではいかないが最近親がおなじことばかり聞くなあ」

「認知症になる前に相続対策をしてほしいが、親が聞く耳を持ってくれない」

この記事をいろいろな立場の方が読まれていると思います。
ひょっとしたら認知症なんて自分の親には関係ない!と考えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。しかし、認知症は意外と身近な問題です。

少し古いデータになりますが、2012年時点でなんと65歳以上の方の15.0%(462万人)が認知症です。
また、2025年には最大で、65歳以上の方の20.6%(730万人)が認知症になるとされています。(いずれも内閣府掲載の平成28年版高齢社会白書(概要版)より引用)
20.6%と書くと少ないように見えるかもしれませんが、これを言い換えると3人に1人以上の割合で両親のうち少なくとも一方が認知症になるということです。
認知症になってしまうと、実際にアクションに移せる相続対策の数は制限されてしまいます。

なぜなら、認知症の方が行う法律的な行為は原則無効になるからです。
今回は、相続対策において、認知症について考えたことがある方にも考えたことがない方にも役に立てていただきたく、記事を書きました。
この記事をきっかけに、認知症になる前の相続対策を考えていただければ幸いです。

また、後半では、言いにくい相続に関する話をどのように親にすれば良いかについても、私の経験に基づいてお話させていただきます。
盆や年末年始の帰省などに備えて、ぜひこの記事を参考にしてみてください。

1章 認知症患者の5人に1人は80歳未満!早速相続対策をしよう!

認知症にかかっている方のうち5人に1人以上は80歳未満だと言われています。(「日本における認知症の高齢者人口の将来推計に関する研究」(平成26年度厚生労働科学研究費補助金特別研究事業)より引用)

先にお伝えしたとおり、認知症になると法律上の行為は原則無効です。なぜなら、法律上の行為は、当事者の意思がしっかりしていないと効力が生じないものとされているからです。
具体的に認知症になる前・後で、できる手続は次の図の通りかわります。

相続対策が手遅れにならないように、早めに手続を開始したり専門家に相談することを心がけ下さい。

2章 親が認知症になる前にしておきたい相続対策4選

2-1 遺言を残してもらう

遺言とは、生前に、主に自己の財産をどのように処分するかを書き遺しておくことを指します。相続対策としては比較的ポピュラーなものかなと私は思います。
以下、遺言を用いた相続対策について説明します

2-1-1 遺言の種類

遺言の種類は法律上大きく3種類にわけられます。

①自筆証書遺言
遺言を遺す人が、全文、日付及び氏名を自署し、押印することによって作成する遺言です。
自力で簡単に作成することができるため、お手軽である反面、不備があって法的効果が発生しないリスクがあります。また、偽造・変造されたり隠されてしまうというリスクもあります。

②公正証書遺言
証人の立会いの元、公証人に依頼して作成してもらう遺言です。保管も公証人が行ってくれます。
専門家が作成するため、法的不備が発生しにくく、後日の紛争防止につながります。一方、公証人に対する手数料が発生するため、手続きにかかる費用が高額になります。

③秘密証書遺言
遺言を残す人が遺言に署名・押印し(自筆証書遺言と違って全文の自署は不要です)、遺言に押したものと同一の印鑑でその遺言を封印したうえで、公証人に一定の手続を依頼することで成立する遺言です。
遺言は公証人が保管するので、偽造・変造されたり隠されたりというトラブルが防げます。
対して、内容に関して専門家である公証人が確認するわけではないので、不備があれば遺言が無効になりえますし、公証人に対する費用も発生します。

2-1-2 メリット

遺言は“争続”の予防につながります。
相続人間で相続をめぐって争うことを、俗語で“争続”と呼んだりします。
遺言が残っていなければ、相続人間で遺産をどのように分け合うか話し合いをすることになりますが、相続人の仲が悪いとなかなか話合いがまとまりませんし、最悪裁判手続に発展しかねません。
しかし、認知症になる前に遺言をうまく活用して“争続”を回避できた方もいます。
仲の悪い相続人間で遺産の分け方を話し合わないで済むよう、予め遺言で遺産をどのようにわけあうか決めておいたのです。

2-1-3 注意点

(1)自筆証書遺言で行う場合、不備があって法律上有効か争われるケースがあります。
以下の具体例についてはやや専門的ですが、争いの元になりうるという点をご理解いただければと思います。

事例

結論

判例

押印が指印であった場合

有効

平成元年2月16日最高裁判決

平成元年6月20日最高裁判決

平成元年6月23日最高裁判決

押印に代えて花押を記載していた場合

無効

平成28年6月3日最高裁判決

横にのり付けされた2葉の遺言書のうち、1葉にのみ日付・氏名の自署及び押印がある場合でも、当初から1通の遺言として作成されていたことが判明した場合

有効

昭和36年6月22日最高裁判決

遺言書に署名・押印がなかったものの、検認時に既に開封されていた封筒に署名押印があった場合

無効

平成18年10月25日東京高裁判決

サインの習慣だけしかもたない帰化した人が、押印のない英文の自筆証書遺言を作成した場合

有効

昭和49年12月24日最高裁判決

(2)認知症になると、判断能力に問題があるとされて、遺言はできません。
たとえ公正証書遺言であったとしても、意思がしっかりしていないのに作成すれば後日争われて無効になるケースもあります。(平成27年8月27日東京高裁判決など)

2-2 後見制度を活用する

後見制度は、認知症で判断ができない人に代わって、裁判所で選任された代理人が財産管理や契約などを行う制度です。
認知症対策としての後見制度には、法定成年後見制度と任意後見制度があります。

2-2-1 法定成年後見制度と任意後見制度の違いを確認しよう

まず、両方の後見制度の手続の違いを確認しましょう。

(1)法定成年後見制度
本人の判断能力が既に不十分になった後に、親族などの周囲の方の申立てによって、家庭裁判所がサポート役である成年後見人を選任する制度です。
成年後見人になる方・サポートの範囲は家庭裁判所が決定します。

(2)任意後見制度
本人の判断能力が不十分になる前に自らの意思によって予め任意後見人を定めておく制度です。選任の手続部分を家庭裁判所が行うのは法定成年後見制度と変わりありませんが、任意後見人になる方・サポートの範囲は、自分自身で決定します。

では、次いで、それぞれの後見制度についてより詳細に確認していきましょう。

2-2-2 法定成年後見制度について

前述の通り、法定成年後見制度では、裁判所が決定した成年後見人が認知症の方に代わって財産管理や契約などを行います。

2-2-2-1 メリット

(1)成年後見人が認知症の方に代わって契約をすることが可能です。
なぜなら、認知症の方本人が契約をするわけではないため、本人の判断能力が問題とならないからです。
これによって、認知症の方の財産を処分し、相続対策に活用するケースもあります。(しかし、居住用不動産の売却など裁判所の許可を要する行為もあるのでご注意ください。)

(2)成年後見人は認知症の方の財産を守る役割もあります。
例えば、親が認知症になっているのをいいことに、相続人である子の一部が勝手に金融機関から預貯金を引き出しているケースもあります。
このような場合には、親が亡くなって相続が発生したときには、もう既に相続財産がなくなってしまった、ということもありえます。
そのような事態を阻止できうるという点で、法定成年後見制度は相続対策に用いられることもあるのです。

2-2-2-2 注意点

(1)成年後見人は、認知症の方の財産を守るのが仕事です。
よって、認知症の方の財産を損ねるような相続対策(例えば贈与など)はできません。

(2)成年後見人はいったん選任されると、原則認知症の方が死亡するまで解任はできません。
成年後見人を選任して目的の契約を達成したから、もう成年後見人はいらない!ということはできないのです。

成年後見人には報酬が発生しますので、相続対策のつもりがかえって相続財産が減ってしまったということもあります

2-2-3 任意後見制度について

任意後見制度では、法定成年後見制度と同様に、後見人が認知症の方に代わって財産管理や契約などを行います。一方で法定成年後見人とは異なり、後見人とサポートの範囲を自分自身で決定しておくことが可能です。

2-2-3-1 メリット

法定成年後見制度のメリットに加えて、下記のメリットがあります。(ただし、居住用の不動産に関して家庭裁判所の許可は不要です。)

(1)法定成年後見制度と異なり、自分自身の意思でサポート役の後見人決定できます。
法定成年後見人には、通常今まで縁故のない専門家が選任されます。
近時専門家の横領事件がニュースになることがありますが、予め自分自身で信頼できる親族などに任意後見人になることを依頼しておけば、そのような心配は和らぐでしょう。

(2)法定成年後見制度と異なり、自分自身の意思でサポートの範囲を決定できます
法定成年後見制度であれば、日用品の購入など限られたものを除いて、原則的には全ての契約が成年後見人任せになります。
それに対して、任意後見制度であれば、自分自身が不安な部分だけを任意後見人に託すことができ、その文手続に柔軟性があると評価できるでしょう。

2-2-3-2 注意点

これもまた法定成年後見制度と同様ですが、加えて下記の注意点があります。

(1)法定成年後見制度と異なり、認知症の方に代わって契約を取消すことまではできません。
よって、判断能力を欠いた状況で好ましくない契約をした場合、不利益を被る可能性があります。

2-2-4 後見制度の違い早見表

最後に法定成年後見制度と任意後見制度の違いを表にしますのでご確認ください。

法定成年後見制度

任意後見制度

後見人は裁判所が決定する

後見人は自分で決定する

サポートの範囲は法律で規定される

サポートの範囲は自分で決定する

判断能力を失ってからの手続である

判断能力を失う前の手続である

不動産の売却に裁判所の許可が必要

(認められず相続対策できないリスクがある)

不動産の売却に裁判所の許可が不要

認知症の方がした契約を取消せる

認知症の方がした契約を取消せない

2-3 家族信託を利用する

2-3-1 家族信託とは

家族信託とは、自分の財産を、「誰に」「どのような目的で」「いつ」渡すかを、あらかじめ生前に契約し、その財産を管理できる権利を家族に移してその契約を確実に実行させていくことです。

少し難しいと思いますので、図を用いて説明します。

まず、財産のひとつとして、例えば2000万円の土地を所有している自分を想像してください。

①土地を所有している方は、2000万円の財産を持っています。
②また、土地に家を建てたり、駐車場にして収益をあげたり、売却してお金に換えることもできます。

しかし、土地を贈与などで手放してしまえば他人のものになるので、2000万円は他人のものになりますし、ましてや家を建てたり駐車場にしたり売却したりはできなくなります。
つまり、土地の所有者(所有者であった方)は、①と②の両方ができるか両方ができないかのどちらかになります。
ところが、家族信託を利用すれば①の状態を保ったまま、②のみ子どもなどの家族に託すことができます。
つまり、②の判断能力が必要不可欠な部分だけ、家族などの信頼できる人に託し、①だけは自分の手元においておくことができるのです。

これが家族信託です。
なお、専門用語で、元となる財産を託す人を委託者、財産を託される人を受託者、託された財産から利益を受ける人を受益者といいます。
委託者と受益者は同一人物でも問題ありません。

2-3-2 メリット

家族信託は、他の手続と比べて、柔軟な相続対策をすることができます。
なぜなら、他の手続きは、法律で様々な制限があるので、できることが縛られてしまいますが、家族信託は当事者が自由に定めることができる契約を基礎にしているので、法律に縛られにくいからです。

家族信託は、本人の判断能力が不十分になっても、契約を受託者に代わってしてもらえます。
この点は、他の相続対策でも当てはまる場合がありますが、以下の違いがあります。
(1)財産の保全を目的の1つとする後見制度とは異なり、家族信託の目的は契約によって定まるので、贈与・資産運用など積極的な相続対策になじみます。
(2)法定成年後見制度とは異なり、居住用不動産の売却に裁判所の許可は不要です。
(3)任意後見制度とは異なり、自分自身の死後の資産についても定められます。
(4)遺言とは異なり、亡くなる前から効力を生じさせることができます。

2-3-3 注意点

(1)家族信託は他の手続と比べて複雑なので、自分自身で手続を行うのが難しい印象です。専門家に依頼する際はホームページなどを確認して実績を確かめましょう。

(2)遺言と同様ですが、認知症になると家族信託は行えません。

2-4 認知症になる前に生前贈与をしておく

生前贈与とは、文字通り、死亡する前に財産を他人に贈与することです。
相続対策として、私もよく相談者にお話させていただいております。

2-4-1 メリット

生前贈与には税金に関しての優遇制度がたくさんあり、資産状況次第では相続税の対策をすることができます。
相続税も、贈与税も、それぞれ、相続・贈与した金額に応じて課税されます(国税庁のホームページを参照)

よって、認知症になる前に、制度を利用して贈与税が減免される方法で贈与をすることにより、相続のときに保有している財産を減らし、相続税の課税額を減少させることができる場合があるのです。
税金に関する制度・特例としては、下記のものが良く利用されている印象です。

(1)住宅取得のための贈与の特例
主に親などから子などに住宅取得などのための金銭を贈与する際に利用します。

(2)夫婦間での贈与の特例
主に長年連れ添った夫婦間で贈与をする際に利用します。

(3)暦年贈与制度
1年間で110万円までは贈与税が発生しません。

(4)相続時精算課税制度
主に高額の資産を親などから子などに贈与する際に利用します。

(上記(1)~(4)の制度の概要は国税庁のホームページを参照)

認知症になる前に、ぜひとも相続対策を行いましょう

2-4-2 注意点

(1)税金の優遇がある税制上の特例に関しては、期限までの申告が必要なものが多数あります。
また特例に関しては、適用を受けるための条件があるので、予め調査をするか税理士などの専門家に相談するのが望ましいケースもあります。

(2)遺言と同様ですが、認知症になると生前贈与は行えません。

3章 認知症対策に乗り気でない家族を説得するには?

これまで、早期の相続対策の重要性や各相続手続の中身について説明してきました。
しかし、
「すぐにでも家族に相続体策を提案したい、でも身内の死について話しにくい」
「親は強情で、『わしがボケるわけないだろう』とか言うタイプだろうなあ」
と考えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

私も日々の相談業務でそういった声をよく耳にします。
そこで、私が実際に相談者の方にこういった方向でご家族にお話してみてはいかがでしょうか?と提案して、すんなりと相続対策のお話ができた事例を1つご紹介します。

「相続対策は保険のようなものです。」

たしかに、頭記の通り認知症は15%~20%程度の方しか発症しません。
しかし、実際に認知症が発生すると自分の財産なのに手がつけられないということが頻発します。
事故が起こったときに保険に入ってなければどうしようもないように、認知症になってから行動したのでは遅いのです。
しかも、相続対策が必要なのは認知症の場合だけではないのです。
例えばいきなり脳腫瘍で倒れて脳の器官が損傷した場合でも、判断能力がなくなった場合には同様の現象が発生します。

判断能力がなくなったときに相続対策ができていなければ、残された家族が苦労することになるでしょう。その点を考えて、もしものときに備えて今のうちに取れる対策をとっておくようご家族にお伝えください。

4章 まとめ

以上が認知症に関する相続対策の概要です。
特に家族信託の部分など複雑な部分もあったかと思います。
もしわからない部分があれば、最近は無料相談を行っている専門家もいますので、そちらにお問い合わせいただくのも1つの方法です。

しかし今回の記事の中で私が伝えたかった点は、認知症になってすることができる相続対策はかなり限られているということです。
家族の認知症という、デリケートな問題ではありますが、万全な相続対策ができるよう、ぜひとも早めの相続対策を心がけることをおすすめします。

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