家族信託を検討中の方【必読】家族信託の手続き方法と専門家の選び方

家族 想い 相続

「家族信託ってどうやって手続きするの?」

家族信託を検討されているあなたも「家族信託の手続き」について、わからないことだらけではないでしょうか。

現在、相続対策や認知症対策として大注目の家族信託ですが、手続きや具体的な手順については、まだまだ理解が進んでいないのが現状です。

そこで本記事では手順ごとに手続き方法をできるだけわかりやすく説明することで、家族信託を検討している方が「家族信託の手続き」について理解していただければと思っています。

ただし、ここで注意が必要です。

「家族信託の手続き」は実務経験が豊富な司法書士や弁護士などの専門家へ依頼することが非常に大切です!

なぜなら家族信託を成功させる上で最も重要な信託契約の内容をどのようにするのかという、「信託内容の設計」を中途半端な知識で行うことは、非常に危険だと考えるからです。

また、司法書士や弁護士のような法律専門職であっても30件以上の家族信託を提案・組成した経験のある人はごく一握りなので、実務経験豊富な専門家を探すことも、この家族信託を成功させる上では重要な要素と言えます。

そこで本記事では家族信託の手続き方法について、手順ごとの流れから、家族信託の実務経験が豊富な専門家の選び方まで解説したいと思います。

1章 家族信託とは

家族信託はその名のとおり、信頼できる「家族」に財産を託すことから「家族信託」と呼ばれてます。
また、この「家族」には血縁関係がなくとも、親子同然の他人や遠縁の親戚など、家族のようにお付き合いしている人も含まれています。

家族信託を端的に表すと以下のとおりになります。

【家族信託とは】

① 自身の財産(不動産・現金・未上場株式etc…)を、

② 信頼できる家族(=受託者)に託し、

③ 誰か(=受益者)のために、

④ 特定の目的に従って、管理・処分してもらう財産管理の手法です。

1-1 家族信託の仕組み

家族信託とは、財産管理手法の1つとして、財産を持っている人(委託者)が「契約」によって、信頼できる相手(受託者)に対し、財産(不動産・預貯金など)を移転し、契約で決められた目的(信託目的)に従って、特定の人(受益者)のためにその財産(信託財産)を管理・運用・処分することをいいます。

もっと分かりやすく言うと、自分の財産を、「誰に」「どのような目的で」「いつ」渡すことを、あらかじめ契約し、その財産を管理・運用・処分できる権利を信頼できる家族に移して、その契約内容に沿って実行してもらうことです。

家族信託の仕組みを以下の図をもとに確認してみましょう。

家族信託 仕組み

家族信託では上記のとおり、登場人物が3人出てきます。
これら3人をそれぞれ「委託者」「受託者」「受益者」と呼びます。

それぞれの登場人物について説明しますので、ここはしっかりと抑えておきましょう。

【家族信託の登場人物】

(委託者)

委託者は現在、財産を持っている人です。

委託者はこれから自身の持っている財産の管理や処分を任せたいと思っています。

具体的には高齢の父母や祖父母であることが多いです。

(受託者)

受託者は委託者から財産を託される相手であり、実際に財産の管理や処分を行う人です。

(受益者)

受益者は受託者に託した財産から経済的な利益を受ける人です。

言い換えると「信託された財産の実質的な持ち主」と言えるでしょう。

信託契約の内容によりますが、契約当初は委託者=受益者となることがほとんどです。
上図でも委託者父=受益者父のように同一人なっていますが、このようなケースでは賃貸不動産から発生した収益や不動産を売却した代金は実質的に全て父が受け取ることになります。

2章 家族信託の手続き方法

本章では家族信託の手続き方法を手順に沿って説明したいと思います。
まずは手続きの流れ全体を確認しておきましょう。

2-1 家族信託の手続きの流れ

以下の図は家族信託の一般的な事例である「不動産」と「現金」を信託財産とするケースの手続きの流れになります。

家族信託 手続き 流れ

2-2 家族信託の手続き方法と手順

まず初めに家族の想いや心配事をもとに「家族信託を行う目的」を決めます。
家族信託を行う目的が決まれば、次に「家族信託契約の内容」について決めることになります。

それでは手順ごとに手続きの方法を見てきましょう。

2-2-1 家族信託を行う目的を考えよう

はじめに「家族信託を何のために行うのか?」という家族信託の目的を考えなくてはなりません。

自分たちが何のために家族信託を行い、自身や家族の財産をどうしたいのかという目的を明確にすることが大切です。

家族信託を行う目的は人それぞれなので、ここではオーソドックスな「家族信託を行う目的例」を挙げますので、こちらを参考にご家族で話し合って「家族信託を行う目的」を明確にしてください。

【家族信託を行う目的例】

①高齢者が認知症や病気により意思判断能力が低下する恐れがあるため、財産を家族に託しておきたい。

②子どもたちに不動産を平等に相続させたいが、共有名義はトラブルのもとなるので避けたい。

③現在所有している共有不動産について、共有者間でトラブルが起きないようにしておきたい。

④認知症の妻に後見人をつけなくて済むように財産を遺したい。

⑤子供がいないので妻亡き後は自分の血族に財産を遺したい。

⑥子がいない息子夫婦にも財産を相続させたいが、息子夫婦が亡くなった後、嫁側に財産がいかないようにしたい。

⑦親なき後に障害のある子の生活を保障したい。

2-2-2 信託契約の内容を決めよう

家族間で話し合った結果、「家族信託を行う目的」が決まれば、次にどのような「家族信託の内容」にするのかを考えます。
ただし、家族信託の内容を決定する前に遺言や任意後見など他の法制度と比較して、「本当に家族信託がベストな選択なのか」ということを検討しなければなりません。
相続の知識および実務経験が豊富な専門家を交えて、話し合いを進めることをおすすめします。

家族信託の内容として決めておくべき9つの項目を以下にまとめましたので参考にしてください。

【信託内容として決めておくべき9つの項目】

項目

説明

信託目的

何のために信託によって財産管理をするのかという信託をする目的

委託者

財産を預ける人(財産の現所有者)

受託者

財産を預かって管理する人

受益者

信託財産から経済的な利益を受け取る人

第二受託者

当初の受託者が財産管理出来なくなった場合、次に信託財産の管理を行う人

第二受益者

当初の受益者の次に受益権を持つことになる人

信託財産

預ける財産(不動産、現金、未上場株が中心になります。)

信託期間

信託契約を継続させる期間。当初の受益者が死亡するまでとすることもある。

残余財産の帰属先

信託終了後に信託財産を取得する人。

現時点で決めれない場合は「相続人で協議する」としておくこともできる。

2-2-3 信託契約の内容を書面にしよう

家族信託の契約内容が決まれば、決定した内容を文章化し「信託契約書」を作成します。
信託目的を実現するためには、この信託契約書の一つひとつの条文が非常に重要になります。

下記に契約書の雛形を掲載していますので確認してください。

家族信託 契約書

2-2-4 信託契約書を公正証書にしよう

信託契約書は必ずしも公正証書にしなければいけない訳ではありませんが、以下の理由から公正証書にすることをオススメします

【公正証書で信託契約することをオススメする4つの理由】

①公証人が確認するので誤字や表記間違いがない

②公証人が本人の意思確認をするので、後日の紛争になりにくい

③信託契約書を紛失しても再発行してくれる

④金融機関で信託口口座の作成がスムーズになる

公正証書にすると公証人役場へ支払う費用がかかりますが、上記理由から公正証書にしておくことがベストです。
次に信託契約書を公正証書にする際に必要なものを説明いたします。

【公正証書にするときに必要な書類等】

①委託者の印鑑証明書(発行から3ヶ月以内のもの)

②受託者の印鑑証明書(発行から3ヶ月以内のもの)

③委託者および受託者のご実印

④財産に関する資料

(固定資産課税証明書・固定資産評価証明書・不動産登記事項証明書など)

⑤家族関係に関する資料

(戸籍謄本など)

2-2-3 不動産の名義変更をしよう

信託財産に不動産がある場合は信託契約の締結後、すみやかに不動産の名義変更を行う必要があります。
不動産の所在地を管轄している法務局へ登記申請することで名義変更を行います。

家族信託に関する不動産の名義変更についてはかなり難易度が高いので、実務経験豊富な司法書士へ依頼することをおすすめします。
また、信託財産に不動産がある場合は登記手続きを行う必要があるため、家族信託の設計や提案を専門家に依頼する段階で、実務経験豊富な司法書士を選んでおけばワンストップで登記まで手続きしてくれます。

登記申請の手続きに必要なものを確認しておきましょう。

【登記申請手続きに必要な書類等】

①委託者の印鑑証明書(発行から3ヶ月以内のもの)

②委託者のご実印

③受託者のお認印

④受託者の住民票

⑤固定資産評価証明書

⑥登記済権利証書(登記識別情報通知書)

次に名義変更後、不動産登記簿謄本にどのような表記がされるか確認しておきましょう。

家族信託 登記謄本

2-2-4 お金を管理する専用口座を作って送金しよう

信託財産に現預金がある場合は信託契約の締結後、すみやかに「信託専用の口座」にお金を移す必要があります。
なぜなら受託者には自身の財産と信託財産を分別して管理する義務があるため、信託されたお金は「信託専用の口座」で管理しなければならないのです。
また、委託者の預金口座にある預金をそのまま信託することはできないため、委託者の預金口座から信託専用口座に送金する必要があります。

信託財産に現預金がある場合の注意点をまとめていますので確認してください。

【信託財産に現預金がある場合の2つの注意点】

☑現預金は「信託専用の口座」で管理しなければならない

☑預金口座のままでは信託できない

次に信託専用の口座の開設から送金までの流れを説明したいと思います。。

本来、「信託専用の口座」は信託財産の管理口座であることを明確にしておく必要があるため
「委託者 山田太郎 信託受託者 山田一郎 信託口」
というような名義で口座開設すべきですが、このような「信託口口座」と呼ばれている信託専用の口座を開設してくれる金融機関は多くありません。

また、開設してくれる可能性のある金融機関であっても、預金額や金融機関との繋がりなど案件ごとに判断しているようです。開設できるケースであっても各金融機関ごとに要件があるので、事前にしっかりと確認しましょう。

下記に「信託口口座」開設から送金までの手順をまとめているので確認してください。

信託口口座の開設から送金までの手順】

STEP1 事前に金融機関へ「信託口口座」の開設について問い合わせしよう

STEP2 開設に必要な条件や資料を確認しよう

STEP3 信託契約締結後、金融機関で「信託口口座」を開設しよう

STEP4 速やかに委託者の口座から「信託口口座」に送金しよう

仮に「信託口口座」が開設できないときは、事前に受託者名義の普通預金口座を開設しておき、信託契約書において、「信託専用口座」として口座番号を記載しておきます。

そのようにしておくことで、外見上は受託者名義の普通預金口座であっても、その口座に入っている預金が信託財産であるという客観的な説明ができることになります。

信託口口座が開設できなかった場合の方法として、下記に「信託専用口座」開設から送金までの手順をまとめているので確認してください。

【信託専用口座の開設から送金までの手順】

STEP1 受託者名義の「信託専用口座」として普通預金口座を開設しよう

STEP2 信託契約書に信託専用口座の口座番号を記載しておこう

STEP3 信託契約締結後、速やかに委託者の口座から信託専用の口座に送金しよう

3章 家族信託の手続きに必要な費用

家族信託の手続きには「実費」と「専門家や公証人への依頼費用」が必要になります。
それでは家族信託の手続きに必要な費用を詳しく見ていきましょう。

3-1 家族信託の手続きに必要な費用

まずは家族信託の手続きを行う際に必要な費用の種類を説明いたします。
家族信託の手続きに必要な費用は大きく分けて以下の6種類になります。

【家族信託を行う際に必要な費用一覧】

①信託の設計およびコンサルティング報酬

司法書士や弁護士などの専門家に信託契約の内容を設計してもらう費用です。

②信託契約書の作成、公正証書化のサポート報酬

設計された信託契約の内容を明文化し書面にした後、公正証書にするためのサポート費用です。

※①のコンサルティング費用に含まれている場合もあります。

③公正証書化の費用

信託契約書を公証人役場で公正証書にしてもらう際に公証人役場へ支払う費用です。

④司法書士への登記報酬

信託財産に不動産が含まれている場合に、不動産の名義変更手続きを司法書士に依頼する際の費用です。

⑤登録免許税

信託財産に不動産が含まれている場合に、不動産の名義変更手続き時に法務局へ支払う税金です。

⑥その他実費

戸籍謄本や登記簿謄本など、家族関係や信託財産について調査するために必要な実費です。

次に①~⑥の各項目についての費用の目安を説明いたします。

【①信託の設計およびコンサルティング費用】

信託財産の評価額

手数料

1億円以下の部分

1%(3000万円以下の場合は、最低額30万円)

1億円超3億円以下の部分

0.5%

※上記は一般社団法人家族信託普及協会の参考料金をもとに、同会会員のグリーン司法書士法人の料金体系になります。

【②信託契約書の作成、公正証書化のサポート報酬
ご依頼される専門家によって異なりますが、目安として10~20万円程度となります。また、初めから①のコンサルティング費用に加算されている場合もあります。

③公正証書化の費用
公正証書の手数料は信託契約の内容や信託財産の価格によって異なります。目安として信託財産が5000万円以下の場合は3万円程度、1億円以下の場合は5万円程度になります。

④司法書士への登記報酬
信託財産とする不動産の固定資産税評価額や不動産の個数によって異なります。目安として信託する不動産が土地1つ、建物1つで固定資産税評価額の合計が5000万円以下の場合であれば、10万円程度になります。

【⑤登録免許税】
信託財産とする不動産の固定資産税評価額や不動産の個数によって異なります。目安として信託財産が土地1つ、固定資産税評価額が3000万円の場合は9万円になります。

以下が登録免許税の算定方法になります。

登録免許税:土地:固定資産税評価額の0.3%

登録免許税:建物:固定資産税評価額の0.4%

⑥その他実費】
信託財産の種類や信託契約の内容によって増減します。
目安として5000円~1万円程度になります。

次のモデルケースをもとに家族信託の手続きに必要な費用合計の目安を確認しましょう。

【信託財産が自宅および金銭(信託財産が3000万円の場合)】

①信託の設計およびコンサルティング報酬
30万円(税抜)

②信託契約書の作成、公正証書化のサポート報酬
15万円(税抜)

③公正証書化の費用
3万円

④司法書士への登記報酬
10万円(税抜)

⑤登録免許税
7万5000円(信託する土地の固定資産税評価額が2500万円の場合)

⑥その他実費
5000円

=========== 合計 約66万円 ==========

上記の合計額が高いと感じるか、それとも安いと感じるかは人それぞれだと思いますが、家族信託を検討する際には額面だけではなく、認知症になってしまうリスクや成年後見手続きの煩雑さを踏まえ、検討することが大切になります。

4章 家族信託を失敗しないための専門家の選び方

家族信託についての相談先として、一般的に司法書士、弁護士、税理士などの専門職が挙げられますが、どの専門職へ相談したら良いという答えはありません。
なぜなら、司法書士や弁護士の資格を持っているからといって、家族信託に精通しているとは限らないからです。

ポイント:家族信託を成功させるには家族信託に関する知識および実務経験が豊富な専門家に依頼することが一番重要です!

また、強いて言うなら不動産を信託財産とする場合は司法書士の関与が必要になるため、家族信託の実務経験が豊富な司法書士へ依頼すればワンストップで登記手続きまで依頼することができます。

次の「専門家の選び方」を参考に安心して任せることができる専門家を探しましょう。

4-1 家族信託の手続きを依頼する専門家の選び方

私の肌感覚では現時点(平成29年)において、司法書士、弁護士、税理士で家族信託の実務経験がある専門職は全体の5%以下だと思います。さらに家族信託について30件以上の実務経験のある専門職はもっと低い割合になることでしょう。したがって、家族信託の手続きを安心してスムーズに進めて欲しいとお考えの方は、家族信託に精通しており、かつ実務経験豊富な専門家を探すことが第一歩になります。

また、家族信託の手続きを進める前には、遺言や成年後見など他の相続に関する法制度と比較して「本当に家族信託がベストな選択であるか」を検討する必要があるので
相続関連の実務経験が豊富で、かつ家族信託の実務経験豊富な専門家が一番最適な相談先になります。
このような基準をもとに相談する専門家を選ぶ必要がありますが、実務経験豊富な専門家の割合を考えると人からの紹介などで探すことは難しいため、インターネットを使って探すのが一番手っ取り早い方法と言えるでしょう。

ネットで「大阪 家族信託」など、ご自身又はご両親が住んでいる都道府県名+家族信託と検索すれば様々なHPが出てきます。

HPから調べる際の5つのチェックポイントは以下のとおりとなります。

【HPから調べる家族信託の実務経験豊富な専門家の5つのチェックポイント】

・家族信託(民事信託)専門のホームページがある。

・HPに家族信託の取扱件数が表示されている。

・不動産会社や銀行からの依頼で家族信託に関するセミナーを頻繁に開催している。

・相続専門のホームページがある。

・相続のホームページに遺産整理や成年後見など、幅広く相続に関する情報が記載されている。

当メディアを運営している「グリーン司法書士法人」は、積極的に家族信託に取り組んでおります。ご自身またはご両親のどちらかが関西在住の方は以下のサイトから無料相談をご予約くださいませ。

無料相談はこちら

5章 まとめ

ここまで家族信託の手順別の流れや専門家の選び方までご説明してきましたが、ご理解いただけましたでしょうか。
家族信託を上手に活用すれば以下のようなリスクに対して非常に効果的です。

・認知症による資産凍結リスク
・相続人同士の紛争リスク
・共有不動産の紛争リスク

しかし、家族信託の知識が十分でない人が契約内容を決定することは非常に危険です。実務経験豊富な専門家に依頼して、専門家を交えて手続きをすすめていくことをおすすめいたします。