
誰しもが一度は「家族の死」を経験します。
そのとき「相続」について「専門家に相談したい!」と思っても「どこに相談したらいいんだろう!?」と迷われることがあります。
このような迷いが生じないように、本記事では事例別に相続の相談先をまとめています。
相続の相談をする専門家は「司法書士・税理士・弁護士・行政書士」が一般的です。
しかし、これらの専門家ごとに得意分野があるので相談したい内容により、どの専門家へ相談することがベストか自ら判断しなければなりません。
本記事をお読み頂けば、いざという時あなたのお悩みに応じて、どの専門家に相談に行けば良いのか、そして相続の相談をする際のポイントが分かります。
是非お読みいただいて、いずれは訪れる親の相続の際にご活用下さい。
目次
第1章 相続の専門家に相談する事で得られる3つの効果
相続に関することを素人判断すると大きな失敗をすることが有ります。
いまは無料で相談を聞いてくれる専門家も多いので上手く活用しましょう。
専門家に相談することで「抱えていた悩みが解消」される
相続についての悩みを、適切に整理して解決しようと思うと「法律」や「税金」の幅広い知識が必要です。ご自身で何日、何カ月悩んでいた事が専門家に相談するとあっという間に解消することもあるでしょう。
初回無料の相談を受け付けている専門家も多いので相続に関しての悩みのある方は積極的に活用しましょう。
今はテレビ会議システムを利用して相談できるとこも増えていますので、専門家への相談の敷居が低くなっています。
手続方法や流れを教えてくれるので「スムーズに手続き」できる
相続に関する手続きは種類も多く、かつ複雑なものが多いです。相続手続きは多くの方にとって初めての経験になるため、法務局や税務署などの役所と打合せをしながら、必要な資料を集めるのはかなりの手間と時間が必要です。また、役所や銀行は平日の日中しか営業していないので、打ち合わせや資料収集のために何度も仕事を休まなければなりません。
専門家へ相談し手続方法や流れの説明を受けるだけでも、手間や時間を大幅に節約できます。また、自分でできること、専門家に依頼した方がよいことが鮮明になるので、専門的な本や記事を読むなど無駄な努力をしなくて済むというメリットもあります。
相続争いの防止や節税の方法を教えてもらい「円満でお得な相続」ができる
相続でもっとも避けたいのが「遺産相続争い」ですが、遺産を巡る争いは決してお金持ちだけの話ではありません。
実家しか残ってないのに長男が1人で相続すると主張したり、介護をした長女から相続分を増やして欲しいなど、相続には「争いの種になるようなこと」が沢山潜んでいます。専門家は沢山の相続事例を見てきているので、相続争いを防止するコツを教えてもらい「円満な相続」を実現しましょう。
また、相続に関する税金は税理士でも間違えてしまうことがあるほど複雑です。相続税以外の税金の知識も必要になるので素人判断では難しく、自分で計算して高額な相続税を納めても税務署は教えてくれません。(少ない場合は教えてくれます…。)専門家へ相談することで様々な税制の控除や特例を駆使して「お得な相続」を実現することができるでしょう。
第2章 相続についての4つの相談先とは
相続についての主な相談先として大きく以下の4つが存在します。
・司法書士
・弁護士
・税理士
・行政書士
しかし、これから相続相談をしたいと考えているあなたは、「どこに」「どうやって相談するのか?」「お金はいるの?」など疑問がいっぱいだと思います。
あなたのお悩みの種類により、それぞれに向いている相談先があります。
あなたの抱えているお悩みに適切なアドバイスをくれるのはどの相談先なのかを、きっちりと理解しましょう。
それぞれの相談先について一般的に取り扱っている相続に関する業務についてまとめます。
2-1 司法書士への相続相談
2-1-1 司法書士の特徴
司法書士は相続登記の専門家です、それに近年司法書士は簡易裁判所での代理権も持つようになりました。そして裁判所へ提出する書類を作成することも出来るため、相続に関連する様々な幅ひろい業務を行うことができ、相続に関する民法の知識も豊富で不動産に関する知識が深いのが特徴です。
2-1-2 司法書士に相談できること
・不動産の名義変更(相続登記)
・亡くなった方が役員をしていた会社の変更登記
・金融機関の相続手続き
・遺言書の作成
・遺言書の検認
・遺言執行
・遺産分割協議書の作成
・相続放棄
2-1-3 こんな人・状況の人は司法書士への相談がおすすめ
① 相続した財産の中に不動産がある
不動産の名義変更(相続登記)は司法書士の独占業務ですので、不動産が相続した財産の中にある場合は最初から司法書士に相談すると良いでしょう。
② 遺産分割協議書を作成したい
特に相続人間でトラブルになっていない場合に、遺産分割協議書を作成したいというケースの場合は司法書士に相談をすると適切なアドバイスも得られますしおススメです。
③ 相続放棄をリーズナブルに行いたい
相続放棄の手続きをプロに依頼したいという場合は、司法書士と弁護士に依頼できます。
違いは弁護士の場合は、代理人として受任できるので全て丸投げ出来るという点です。
司法書士の場合は、書類作成の依頼となるのでその点で報酬は弁護士に比較して安い場合が多いのです。
ただし、相続放棄の手続きはほとんどの場合は書類のやりとりだけで終わりますので、なるべく安く手続きを行いたい人は司法書士に相談するのが良いでしょう。
ただし、相続放棄に関しては弁護士も司法書士も取り扱わない人も多いので確認をして相談をしましょう。
2-2 弁護士への相続相談
2-2-1 弁護士の特徴
弁護士は紛争解決の専門家です。
特に相続人の間でトラブルになっている場合は、弁護士しか代理人となって活動する事はできません。
紛争になっている相続案件を解決する唯一の資格が弁護士の特徴です。
2-2-2 弁護士に相談できること
・相続に関する争いの解決
・相続放棄
・遺言書の作成
・遺言書の検認
・遺言執行
・遺留分減殺請求
・遺産分割調停
2-2-3 こんな人・状況の人は弁護士への相談がおすすめ
① 相続人間で紛争になっている
相続人間で意見が食い違い紛争になっている場合は代理人として、他の相続人と交渉する事ができるのは弁護士だけです。その場合は最初から弁護士に相談しましょう。
② 遺言書の無効を訴えたい
遺言書が相続発生後に出てきたが、その遺言は無効だと主張したいというような場合は弁護士に相談をしましょう。適切なアドバイスが受けられるでしょう。
2-3 税理士への相続相談
2-3-1 税理士の特徴
税理士は文字通り税金に関する専門家です。
相続が発生した際に、一定額以上の遺産がある場合は相続税の申告が必要です。
相続税の申告は税理士しか行えません。
ただし、税理士で相続税を得意にしている人は一部の税理士です。
事前に実績をホームページ等でしっかりと確認しましょう。
2-3-2 税理士に相談できること
・相続税申告
・準確定申告
2-3-3 こんな人・状況の人は税理士への相談がおすすめ
① 相続税の申告が必要
相続税の申告が必要な場合は、税理士に相談しましょう。
相続税がかかるケースは、基礎控除を超える遺産を相続した場合です。
基礎控除は、3000万円と相続人1人当たり600万円です。
例えば、相続人が2名の場合は、3000万円+600万円×2=4200万円です。
この他にも生命保険控除や様々な控除があるので実際に相続税の納税が必要な人は少ないのです。
2-4 行政書士への相続相談
2-4-1 行政書士の特徴
行政書士は、役所等に提出する書類を作成する専門家です。
ただ、相続に関する業務で行政書士にしか依頼をできない事はありません。
例えば不動産登記は司法書士しか扱えませんので、行政書士に不動産を含む相続手続きを依頼した場合は、不動産の名義変更は別で探さなければならないのです。
2-4-2 行政書士に相談できること
・遺産分割協議書の作成
・遺言書の作成
・金融機関の相続手続き
2-4-3 こんな人・状況の人は行政書士への相談がおすすめ
① 不動産を含まない相続手続きを依頼したい。
金融機関の相続手続きのみという様な場合で、なるべく報酬を抑えて依頼したいというような場合は行政書士に相談をしましょう。
第3章 相続相談先についての3つのポイント
相続に関しての相談をする際の、プロからの3つのポイントをご紹介します。
3-1 事例で分かる!相続全体をコーディネートできるプロがおススメ!!
司法書士・弁護士・税理士に相談する際も他の専門家とネットワークを持っていて、自分の専門外の事もある程度の知識を持っているという様な、相続全体をコーディネートできる人に相談をするのがおすすめです。
なぜなら、相続に関する相談に対して、良い解決方法を提案するには、自分の専門分野だけでなく相続周辺の幅ひろい知識が必要な場合が多く有るからです。
理解していただく為に、事例を紹介いたします。
【事例】
(現状)
・Aさんは現在74歳
・もしAさんが亡くなったら遺産額は約4億円(内訳 不動産3億円 現預金3000万円 自分の経営する会社の株式が7000万円)
・Aさん死亡時の相続人は妻B・長男C・次男D(障がい有り)の3人
(Aさんの希望)
・相続税をできるだけ抑えて子ども達に資産を残してあげたい
・自身と妻Bが亡くなってからも障がいの有る次男Dが困らないようにしたい
・自分の経営する会社を長男Cに継がせたい
(コーディネートを出来るプロが提案したこと)
・Aさん死亡時の概算の相続税の試算
→ 関わる専門家 税理士
・相続税の納税資金確保の為の、不動産の売却
→ 関わる専門家 司法書士・不動産会社
・資産管理会社の設立
→ 関わる専門家 司法書士
・土地の評価を下げる為の建物所有者の変更
→ 関わる専門家 司法書士
・土地を分筆(1つの土地を2つに分ける)して土地の評価を下げる
→ 関わる専門家 土地家屋調査士
・相続税の際に生命保険の控除を使う為、生命保険の加入
→ 関わる専門家 生命保険会社
・長男Cに経営権を譲る為の株式の家族信託
→ 関わる専門家 司法書士
・障がいを持つ次男Dが両親の死後も生活に困らないように家族信託契約
→ 関わる専門家 司法書士
この様に様々な専門家が、相続の場合は関わるケースが多いのです、全体をコーディネートできない事務所に相談すると税金だけにかたよった提案等になってしまったり、各専門家を自分で探す手間が増えてしまいます。
相続全般に幅ひろい知識を持ち、他の専門家と連携を取って全体をコーディネートできる事務所を選択すれば手間も省けますし、安心です。
ホームページ等で他の専門家と連携できる体制になっているのかを確認するのがおススメです。
3-2 信託銀行への相談は資産がかなり大きい人に限られる
信託銀行も相続手続きや遺言作成を業務として取り扱っていますが、費用が非常に高額になるのが特徴です。
相続税の申告や不動産の名義変更等の業務は、別途税理士や司法書士に支払う報酬も必要になるので高額になりやすい傾向が有ります。
結局は、税理士や司法書士に依頼をするなら、信託銀行に支払う報酬は何なの?と疑問に思われるでしょう、その性質は以下の2点かなと思います。
・相続手続き全般の進捗の管理
・専門家(税理士・司法書士等)の手配
遺産額がかなり大きくて、信託銀行と今後も継続してなにかのお付合いをしていこうと考える人以外は、信託銀行の遺産整理業務を利用するメリットは少ないといえるでしょう。
3-3 業者が紹介する税理士等の専門家は業者よりの提案をしがち
アパート・マンション業者や銀行等の紹介の税理士や司法書士等の専門家は、業者よりの提案をしがちですので注意をしましょう。
なぜなら、顧客の紹介をしてもらっている関係上どうしても下請け的になってしまい、業者や銀行が喜ぶ提案をしがちになってしまうのです。
例えば近年、相続税が増税された事により相続税対策と称して様々なセミナーや営業行為を、アパート・マンション建設業者や銀行等が行っています。
そうして、節税になるならと興味を持った一般の方へ相続税対策の提案が行われています。
その際にはそういった業者と提携(下請け)している税理士等が、提案書を作成したり営業に同行をしたりしています。
ただし、どうしても下請けになっている専門家は、紹介をしてくれる業者に喜んでもらえる様な提案をしがちです。
必要ないアパート建設を提案の中に入れたり、最終的には融資につながる様な提案を作ったりと。
もちろん全ての提携している専門家がそうだとは限りませんが、ビジネスの世界では仕事を紹介するほうが立場が強いというのは想像できますよね。
本当にあなたの為の提案をしてくれる専門家を見つける為にも、自分で司法書士や税理士を探してより良い提案をしてもらいましょう。
まとめ
相続相談はあなたの目的により、司法書士・弁護士・税理士を上手く活用しましょう。
その際の選ぶポイントは以下の3つです。
・相続に関する業務を得意にしているか?
・自分の専門だけでなく、相続全般をコーディネートできるか?
・下請け関係のない、しがらみの無い司法書士・弁護士・税理士を見つける
相続に関する事は判断をひとつ間違えると大きな損害を受けることも有ります。
プロを上手く活用して下さい。