空き家の処分方法|放置するリスクや節税方法と注意点について解説

空き家の処分方法|放置するリスクや節税方法と注意点について解説
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司法書士山田 愼一

 監修者:山田 愼一

この記事を読む およそ時間: 5

相続した住宅が空き家となってしまう場合、その扱いについて悩みますよね。

場合によっては、とりあえず空き家にしておいて、後々どうするか考えようと思っている方もいらっしゃるでしょう。

しかし、空き家を放置しておくと、維持費や税金がかかり続けるほか、資産価値の低下や火災・倒壊などのリスクがあるので注意が必要です。

そのため、空き家のまま長期間放置することはおすすめできません。

この記事では、空き家を放置するリスクに加え、空き家の処分方法や処分する際の注意点、空き家を売却する際の節税方法について解説します。


1章  空き家を処分せず放置するリスク

空き家を放置するのには、以下のようなリスクがあります。放置せず、適切に管理するようにしましょう。

空き家の管理方法について詳しく知りたい方はこちら

空き家管理の3大原則と空き家を所有すると生じるコストとリスク

1-1 維持費や税金がかかり続ける|固定資産税が6倍になることも

誰も住んでいなくても、固定資産税などの税金はかかり続けますし、電気や水道を契約しているのであれば、使わなくても基本料金がかかります。

また、築年数の古い建物の場合、倒壊の危険があるときや、周囲の景観を損なう場合などは自治体に「特定空き家」に指定され、固定資産税の軽減措置が受けられなくなり、6倍の固定資産税を支払わなければいけなくなります

なお、家を解体し、更地にすれば「特定空き家」となることはなくなりますが、更地の場合も固定資産税の軽減措置は受けられなくなるので注意が必要です。

1-2 資産価値が下がり続ける

家屋は空き家になれば一気に傷みが進むので、同時に資産価値は大幅に下がります。

そのため、いざ売却しようとしたときには、もう買い手がつかなくなってしまい、建物を解体しなければいけなくなることもあります。

解体には費用がかかりますので、長期間空き家にしていたせいで最終的に損をしてしまう可能性があるのです。

1-3 近隣住民に被害を与えてしまう

家屋は人が住んでいないと想像以上に老朽化が早まります。定期的に窓を開けたり、掃除をしたりと管理をしていなければ、湿気や結露などでカビが発生したり、腐敗が進んでしまうのです。

老朽化が進むと、地震や豪雨など災害時に倒壊して、近隣住民に被害を与える可能性があります。

また、放置した家には害虫が湧いたり、害獣が住み着くことがあります。そういった害虫や害獣が、近隣の家に入り込んでしまうこともあるでしょう。

このように、空き家を放置しておくと、近隣住民に様々な被害を与えるリスクがあります。

1-4 空き巣や放火などの犯罪発生率が高まる

誰も住んでいない家は、窃盗や放火などの標的にされる可能性が高い傾向にあります。

「空き家には盗むものがないから大丈夫」と思うかもしれませんが、その家が狙われたことにより、近隣の家も標的にされることもあるのです。

また、指名手配を受けた犯罪者が「空き家」に隠れることは、よくある話です。

1-5 自治体から指導・勧告を受ける可能性がある

前述したように、近隣住民への被害が想定される住宅の場合、自治体から処分するよう指導・勧告を受ける可能性があります。

自治体から指導・勧告を受けたにもかかわらず、放置し続けると「特定空き家」と認定され、前述したように固定資産税の軽減措置が受けられなくなり、従来の6倍税金を納めなければいけなくなります

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2章 空き家の処分方法

空き家を放置するリスクは前章で解説したとおりですが、では、いざ処分するとしたらどうしたら良いのでしょうか。

ここでは空き家の処分方法について解説します。

空き家を相続した人が知っておくべき5つの問題点とその対処方法

2-1 売却する

それほど老朽化が進んでおらず、中古住宅に需要がある地域であれば、速やかに売却するのが良いでしょう。

売却すれば、税金や維持費を支払う必要がなくなりますし、売却益も取得できます。

一方で、古い家の場合、なかなか買い手がつかない可能性があります。そうすると、結局は空き家のまま放置せざるを得なくなりますし、買い手をつきやすくするためにリフォームをしなければいけなくなります。

そのため、売却をするのであれば、その家が「需要があるのか」「リフォームをしても採算がとれるのか」についてしっかりと調査をしましょう。

空き家を売却するコツ

  • なるべく早く売る
    家は一般的に築年数が20年を超えると価値がなくなると言われています。まだ築年数20年を超えていないのであれば、すみやかに売却しましょう。
  • 古家付き土地として販売する
    築年数が20年を超えていたり、老朽化が進んでいたりして建物に価値が0になってしまうと中古物件として販売することは難しくなります。その場合は、土地をメインに「古家付きの土地」として売却しましょう。
  • 家にあった不動産業者を選ぶ
    売却しようとしている家にあった不動産業者を選びましょう。「見積もりを高く出してくれたから」「大手だから」という理由で選ぶことはおすすめできません。見積もりが高くても実際にその価格で売却できなければ意味がないからです。また、不動産業者には、都内のマンションに強い、地方の中古物件に強いなど、それぞれ強みがあります。場合によっては、大手の業者よりも、地域の老舗の業者の方が売却に強いケースもあります。土地柄や家の状況などを鑑みて、業者選びをしましょう。

2-2 賃貸にする

賃貸にすれば継続的に収益を得ることができるため、賃貸にしたいと考える方もいらっしゃるでしょう。首都圏内や都市部などは比較的マンション・一軒家ともに賃貸物件の需要があるため、有効的に運用ができるかもしれません。

しかし、賃貸にするのは売却するよりもハードルが高くなります。

賃貸にする場合には、2つの問題があります。

まず、1点目は、「その住宅がある地域が賃貸物件に需要がある地域であるか」「物件自体に賃貸としての価値があるか」ということです。地域や物件の問題で、借り手がつかなければ、賃貸として運用することは難しいでしょう。古い物件や、地方の物件は、需要がなく借り手がつかないことも珍しくありません。

賃貸にするための最低限のリフォーム費用も踏まえ、採算がとれるの目処がついているのであれば、賃貸にしてもよいでしょう。

2点目は、物件の管理ができるかという点です。賃貸にするということは入居者と賃貸借契約を結ぶということです。入居者とのトラブルが発生するリスクは常にありますし、物件の管理も必要です。

常に自身で管理ができる環境であれば良いですが、そうでない場合は管理会社へ依頼することも検討しなければいけません。

この2つの問題をクリアした上で、収益がプラスになることが見込めるのであれば賃貸物件にすることを検討してみても良いでしょう。

2-3 解体して更地にする

家の老朽化が進み、売却も賃貸にするのも難しい場合は建物を解体して更地にすることも検討しなければいけません。

更地にすれば、売却することもできる可能性は高くなりますし、駐車場などにすることも可能です。また、更地であれば、自治体や国に買い取ってもらえることもあります。

ただし、解体するにも費用はかかります。また、空き地のまま放置しておくと、軽減措置が受けられなくなり固定資産税は6倍となるので注意が必要です。

2-4 寄付する

どうしても買い手や借り手が見つからない場合は、寄付することも検討しましょう。

使用しない家や土地は、所有しているだけで税金がかかるので、タダであっても手放したほうが良いケースもあります。

寄付する先は、国や自治体だけでなく、一般企業や公益法人等なども受け付けてくれる可能性があります。

ただし、あまりにも老朽化が進んでいて、「利用価値がない」と判断されれば、国や自治体であっても寄付を拒否される可能性があるのでその点は留意しておきましょう。

また、一般企業への寄付の場合、利益を得ていなくても「みなし譲渡所得」として譲渡所得税の課税対象になる可能性があります。物件の状況や、企業によって異なるためくわしくは、税理士などの専門家へ確認するのが良いでしょう。

固定資産税の軽減措置とは?
居住用の家が建っている土地については、固定資産税の課税評価(固定資産課税評価額)が軽減されています。つまり、一般的にみなさんが支払っている固定資産税はその軽減措置を受けての税額となっているのです。

軽減率は、
小規模住宅用地(200㎡以下の部分):課税標準×1/6
一般住宅用地(200㎡超えの部分):課税標準×1/3

となっています。

「特定空き家」になると、この軽減措置が受けられなくなるため、実質「固定資産税が6倍になる」こととなります。


3章 空き家を売却する際の節税方法

空き家を売却する際、売却した利益に応じて譲渡所得税などの税金が課税されます。できれば、支払う税金は少なく留めたいですよね。

ここでは、空き家を売却する際の節税方法について解説します。

3-1 空き家の特例

「空き家の特例」とは、居住していた人が亡くなったことにより空き家になってしまう住宅を売却する際、その売却益が3000万円以内であれば非課税となる特例です。

行政も空き家が放置されることは問題視しているため、空き家をなくすことを目的としてこのような特例が設けられています。

「空き家の特例」が適用される条件は以下のとおりです。

  1. 1981年(昭和56年)5月31日以降に建築された建物であること
  2. 建物の耐震性が認められること
  3. 耐震性がない場合は耐震リフォームをしていること
  4. 相続時から売却時まで、事業・貸付・居住などの用途として利用していないこと
  5. 売却代金が1億円以下になること

上記の要件からも分かるように、物件が古い場合、耐震性が認められないケースがあり、もし認められない場合は耐震リフォームをしなければこの特例は使えません。

空き家の場合、築年数が古いことも多いかと思いますので、耐震性については確認する必要があるでしょう。

空き家特例についてはこちらも合わせてご覧ください

実家の売却はいつがベスト?手続きの流れや税金についても徹底解説4章空き家の特例

3-2 取得費加算の特例

「取得費加算の特例」とは、不動産などを相続した際、相続してから3年10ヶ月以内に売却すれば、相続時に支払った相続税額の一定額を、譲渡資産の取得費に加算できる特例です。

不動産を売却した場合、売却益から取得費を差し引いた額に譲渡所得税が課税されます。通常、不動産を相続したのであれば、購入費などの取得費はかからないため、取得費を差し引くことはできませ。しかし、この特例を使えば、相続税を取得費として売上益から差し引くことができるため、結果的に譲渡所得税を節税することができます。

ただし、この特例は「相続で不動産を取得したこと」「相続税が発生したこと」が前提となりますので、注意してください。


4章  空き家を処分する際の注意点

空き家を処分する際にはいくつか注意点があります。

ここでは、その注意点について解説しますので、空き家の処分を検討している方は参考にしてください。

4-1 相続した空き家は事前に名義変更が必要

相続で取得した家の名義は、名義変更をしない限り亡くなった人名義のままです。

亡くなった人名義のままでは、不動産の処分はできないため、処分する場合は事前に名義変更をする必要があります。まずは、不動産の名義変更(相続登記)をしましょう。

なお、不動産の名義変更には現時点(2021年時点)では期限はありません。しかし、すでに相続登記義務化の法案が可決され、令和6年(2024年)までに施行予定となっています。このため、次の相続が発生した時には義務化されている可能性が高いでしょう。ひとりでも相続人の少ない今のうちから、なるべく早く手続きをされるのがオススメです。

また、名義変更をせずに放置すると、

  • 新たな相続が発生し、相続人が増えることで遺産分割協議が難航する
  • 相続人の気が変わり相続登記の手続きに協力してくれなくなる
  • 相続人が認知症になってしまい、必要なときに相続登記ができなくなってしまう

などのリスクがありますので、できるだけ速やかに名義変更の手続きをするようにしましょう。

なお、不動産名義変更は、資料集めや書類の作成、申請手続きなど、やらなければいけないことが多く煩雑で難しい手続きです。自身で行うと、不足・不備が出て、何度も再提出しなければいけなくなることもあるでしょう。

手続きが不安な場合は、司法書士への依頼も検討してください。「面倒だから」「時間がないから」と放置しておくよりも、一括で司法書士に依頼するほうが良いでしょう。

不動産の名義変更手続きや費用について、詳しくはこちらをご覧ください。

相続登記の義務化でどうなる?今知っておきたい相続登記のこと
相続登記の司法書士【報酬相場】と【依頼を検討した方が良いケース】

4-2 家を解体するのにはお金がかかる

家の解体は解体業者に依頼するため、費用がかかります。その費用は決して安くないため、それなりの出費は覚悟しておかなければいけません。

解体費用の相場は、木造建築の場合で坪単価3〜5万円程度です。一般的な一戸建ての坪数は、30〜40坪ですので、90〜200万円程度の費用がかかります。

4-3 建物を解体すると固定資産税・都市計画税の軽減措置がなくなる

土地に対する税金である「固定資産税」と「都市計画税」は、土地に住宅が建っていると軽減措置が受けられます。一般的に支払っている税金はこの軽減措置を受けての税額です。

しかし、土地の上の建物を解体し、更地にしてしまうとこの軽減措置を受けられなくなるため、固定資産税と都市計画税が高くなるので注意しましょう。

固定資産税・都市計画税の計算方法と軽減率は以下の通りです。

固定資産税都市計画税
敷地面積200㎡以内課税標準額×1.4%×1/6課税標準額×0.3%×1/3
敷地面積200㎡を超える課税標準額×1.4%×1/3課税標準額×0.3%×2/3
更地課税標準額×1.4%課税標準額×0.3%

4-4 需要のない物件は買い手がつかない可能性がある

古く老朽化が進んだ物件や、山奥などの土地にある物件などは買い手がつかない可能性があります。

もし、買い手がつかない場合は解体して更地にすることも余儀なくされるでしょう。

しかし、山奥など立地的に問題がある場合は更地にしても利用価値がない上、売却することも難しいこともあります。国や自治体ですら、買取を拒否するケースもあります。

そういった場合は、更地にした上で所有し続けなければいけません。

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まとめ

空き家は、放置すると近隣住民へに被害が出たり、犯罪発生率を高めたりするなどのリスクがあります。また、「特定空き家」として認定されると、固定資産税が6倍になってしまいます。

固定資産税や維持費がかかり続けることからも、空き家を放置し続けるメリットはないと言えるでしょう。

放置し続ければ老朽化が進み、資産価値も下がるため、それだけ処分の難易度も上がります。もし、今空き家を所有しているのであれば、なるべく早く処分について検討すべきでしょう。

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